我が家に神が来た。

過日のこと。
家で寝間着のまま仕事をしていたら、ピンポンとチャイムが。
出てみると、ご近所の男衆お二人が立っていた。


「今しがた、伊藤さんが神様のクジで次の座元に選ばれたんで、
祇園さん(近所の祇園神社)までちょっと出てこれます?」
「…は?」
「座(ざ)っちゅうて、昔から町の中で回しとるんですわ」
「…わ、わかりました、ともかく、ちょっと着替えていいですか?」

男衆について祇園さんに行くと、いつもは閉じられている神殿が
開放されていて、中には正装の宮司さんはじめ、ご年配の町の重鎮たち。
ご神前には立派なお供物の数々、殿中には雅楽がうっすらと流れている。
「…」「ささ、どうぞ」と促されるまま宮司さんの前へ。
榊を渡され、ご神前に供えて二礼二拍手一礼。展開が早すぎ、
夢の中にいるような心持ちである。


無精髭、寝間着に毛の生えたような格好でキョトンと座ってると、
御幣の付いた竹(写真参照)が差し出された。
この竹に神様が宿り、座元は一年後、次の座元に回すまで、
自宅にてこれを大切に預かるのが役目だという。
祇園さんの御祭神は素戔嗚尊。僕の地元の三重県にある
伊勢神宮の御祭神は天照大神で、素戔嗚尊天照大神の弟にあたるそうだ。
ご縁を感じたことを告白しておく)


帰宅し、とりあえず我が家の簡易神棚に神様を設置。
ほけーっと神様を眺めていたら、家の前でバチ!バチ!と
何かを叩く音がする。ドキドキしながら薄く玄関を開けると、
町の重鎮や男衆の皆さん、その奥さん子どもさんらが、腰に縄を巻いて、
竹の棒で家の前の地面をバチ!バチ!と叩いておられた。


皆さん「ああ、先ほどはどうも」
私「ど、どうも。あの、これは…」
皆さん「ははは、これはまた別の儀式で、縁起もんです。それでは」


と、去って行かれた。
不謹慎かもしれないが、なんだか楽しかった。
八女に暮らして7年目になるが、本当に奥の深い町だと思う。
そんなわけで、我が家に神が来た。


伊藤 有紀